ずっと一緒だと思っていた。
 ずっと僕だけの――。


【My Prince】


 それは容易に予想できた事だった。そういう関係にいつかなるだろうと。寧ろ今までその関係に到らなかった方がおかしいとさえ思う。最早時間の問題だった。
 だが打ち明けられた一言に僕はただ絶望した。
 君ははっきり云った。『アイツと付き合うんだ』と。
 “アイツ”が誰だなんて考えずとも特定できた。とても身近で親しい友人。
 僕は在り来たりな言葉しか出せなかった。『そう、おめでとう。良かったね』そんな事微塵も思っていなかったクセに。また僕は嘘を吐いた。
 それを知らない君は照れたように笑った。『お前ならそう云うと思った』と。君の笑顔は僕の胸をキリキリと締め上げた。
 ねえ。君は僕を信じすぎているんじゃないか。
 博愛主義の優等生だと、今でもそう思っているのか。
 君が思う以上に僕は完璧な人間なんかじゃない。そんなに優しくなんかない。
 僕は、君に笑っていてほしかったから、優しくあった。君以外のどうでもいい人達にさえ、君の悲しい顔を見たくなかったから優しくあり続けた。
 本当は君だけにしか優しくしたくない。この手は君にしか差し伸べないのだから。
 あの日僕に差し伸べられたように。君を救えるのは僕だけだ。
 僕は君に感謝しているんだ。僕を孤独から救ってくれた事。それから一緒に居てくれた事。今の僕が在るのは君のお陰と云っても過言ではない。君は僕に色んな事を教えてくれた。
 僕にとって君は王子様のような存在なんだ。
 不器用だけど素直で、乱暴だけど温かくて。単純で真っ直ぐで、誰もが惹かれてしまう。
 どんなに願っても独り占めできない存在。
 それを判っているから、欲するのを止めた。足止めを喰らっていては、いつまでも経っても君の側に近づけはしない。
 ならば、僕が君に必要とされればいい。そういう人間になればいい。
 実際そうでしょう?僕を頼りにしているから、君は側に居てくれる。何の甘みもなかったら、幼馴染みなんてものは疎遠になる。
 僕はもう、あの頃の弱い僕じゃない。君が望むなら何だって出来る自信がある。
 君の眼が、心が、僕に向けられていなくてもいい。1番近い存在として置いてくれれば、それでいいから。

 もし万が一、“彼女”と拗れる事があったら、僕に云って。
 納得できるように、完璧に別れさせてあげるから。






Please don't upload my fanworks to other websites, copy and reproduce from them, publish them in fanzines without permission.