拙いカタチ

『拙いカタチ』

　女にしか興味がないのだと思っていた。

「…綺麗な顔してんな」
「寝言は寝て云え」

　完全に崩れた道徳。“恋愛は異性でするもの”。

「ほんとーだって、」
「云う相手、間違えてないか？」

　ただ想うだけで良かった。少し離れた所から、見守るだけで。クラスメイトとして、『そういえば居たな』くらいの認識がされれば。それだけで良かった。

「俺の目に狂いはないっ」

　…本当にそれで良いのか。

「麻生って、すごい美人だよ」

　良い筈ない。
　叶うことないこの想いが暴れ出す。『触れたい』と。『繋がりたい』と。『独り占めにしたい』と。醜いばかりの想いが止まらずに溢れ出していく。

「…バカか、お前」

　1度だけで良い。その身体に触れさせて。許されないことだと貶してくれても良い。
　少しだけ汚させて。

「俺を信じろよ」

　そう云って頬に触れた今鳥の手は、微かに冷たく、でも温かかった。

「…麻生？」
「済まないけど、もう少しこのままで、」

　その手に自分のそれを重ねた。
　結ばれる事のない恋だと知っていた。決して交わる事はないと、判り合えないと。
　望みなんか、ない。

　これが俺の拙い愛のカタチ。

back ground

Please don't upload my fanworks to other websites, copy and reproduce from them, publish them in fanzines without permission.